理事長就任挨拶

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令和5年(2023年)1月から日本食品微生物学会の理事長を務めることとなりました。これまで本学会で活動する中で諸先輩方、諸先生方に教えていただいたことが思い起こされ、その重責に身の引き締まる思いです。本学会の発展に微力ながら尽力してまいりますので、会員または関係各所の皆様のご支援とご協力を今後ともよろしくお願い致します。理事、評議員、監事、事務局の皆様には本学会の運営に不可欠な役割について共に活動していただけることに感謝申し上げます。

本学会は、昭和55年(1980年)に「食品衛生微生物研究会」として有志の先生方によって発足し、当時から食品分野の微生物に関係する産官学のさまざまな立場の皆様の重要な活動の場となってきました。時代は変わっても、社会問題として取り上げられることも少なくない食中毒事件、食品微生物制御のための新たな技術や取り組み、食品の開発・製造に伴う衛生管理の問題など、多くの課題に直面するなか、学会活動を通じて広がった人脈や情報・意見の交換は理解や解決への一助になったのではないでしょうか。しかし、令和2年(2020年)からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、本学会でも対面での活動が制限されるなど影響を受けてきました。本学会の最も大きな活動である学術総会が令和2年度は中止、令和3年度はオンライン開催となり、東日本と西日本で各年1回開催する学術セミナーも中止となりました。そのような中、令和4年度には三宅眞美前理事長と担当の山﨑伸二理事を中心とした関係者の努力のもとに、8月に技術セミナー(会場:大阪公立大学りんくうキャンパス)が充実した内容にて対面で開催されました。また、9月に学術総会長を森田幸雄理事が務められて第43回学術総会(会場:タワーホール船堀)が対面で開催され、以前と同じくらいの発表演題数、参加者数、企業協賛が集まり、盛会のうちに無事に終えられました。発表会場では参加者からの質疑が多数あり、展示会場でも参加者同志や展示企業との多くの会話や笑顔が印象的であり、むしろ以前よりも活発な学術総会に感銘を受けながら、以前のような学会活動を皆様が求めていることを実感しました。これから政府のコロナ対策が変わって社会が一層動き始めますので、本学会も積極的な活動が行えるように進みたいと思います。

本学会の会員数は正会員約700名、購読会員や賛助会員を含め、総勢1,000名(令和4年9月9日現在)を超えていますが、ここ数年会員数の減少傾向が認められます。特に会員所属のうち「企業・団体・財団・病院関係」「行政・保健所」「地方衛生研究所」の会員での減少が多くなっています。会員になりにくい状況変化も起こっているかもしれませんが、それら属性の会員にとって学会で活動するメリットが薄らいでいる可能性もあるのではないかと懸念しており、その理由を考え改善することが必要ではないかと思っています。今期の理事会は、理事長含め15名の理事のうち4名の所属が「地方衛生研究所」、2名の所属が「企業・団体・財団・病院関係」で構成されています。これら理事と協力して、新しい意見も取り入れながら進めていきたいと思います。また、評議員、会員の皆様方にもご意見をお尋ねすることもあるかもしれませんが、その際にはご協力をお願い致します。 

本学会の中心となる活動として、以下のことがあげられます。

  • 日本食品微生物学会雑誌を年4回発刊

    当学会誌はJ-Stage に掲載されており、一般の方でも検索によって論文や総説などを読むことが可能です。近年は米国を中心に海外からのアクセスも定着しています。

  • 学術総会を年1回開催

    多くの会員が会する機会であり、評議員会、会務総会を行います。また、各地での開催であり、学術総会を通じた関連団体との親交も期待されます。

  • 学術セミナー、技術セミナーの各地での開催

    学術セミナーは、各地で地域に関連するテーマについて企画されます。技術セミナーは、会員の技術向上に役立つテーマについて実地を伴う内容が企画されます。

  • メルマガを毎月1回配信

    2020年11月から始まり、現在460名の会員が登録しています。タイムリーな情報をお届けします。

  • 各種表彰

    学会賞、研究奨励賞、論文賞、功労賞(個人ならびに団体)、学術総会での優秀発表賞を表彰します。

表彰について、補足させていただきます。論文賞と優秀発表賞は、今は論文執筆や発表経験が少ない方でも職場や大学などの身近な方に相談したり、指導を仰ぎながら繰り返し取り組むことで受賞も可能であると思います。論文賞は、日本食品微生物学雑誌に前年に掲載された原著論文から選考委員会で選ばれます。日頃の成果を当学会誌に投稿を目指して、周りの方に相談してみてはいかがでしょうか。また、執筆経験を増やしてほしいと思う若手の方に促していただけないでしょうか。研究奨励賞は、掲載論文も含めて若い方の研究に賞を授けますので、論文投稿していただくと、この賞の受賞にもつながるかもしれません。奨励賞受賞者がいない年もありますので、会員の皆様にぜひ投稿いただければと思います。優秀発表賞は、毎年の学術総会で発表された口頭発表演題とポスター発表演題からそれぞれ複数が選ばれます。学術総会中に選考委員会で決定し、最終日または後日に表彰されます。若手の会員や学生会員が選ばれることが多いように思いますので、ぜひ、発表していただきたいです。これらの賞は、目に見える形での成果となりますので、自らの励みや客観的な評価にもつながるものです。ぜひ、積極的に当学会誌や学術講演会で成果を発表して下さい。

現在の社会で起こる様々な問題や課題を見渡すと、私を含め本学会の皆様の仕事や生活に繋がっていることが少なくないように思います。戦争や自然災害による食品産業への影響、地球環境負荷軽減のために開発される食品とその安全性、有害物質による食品・水の汚染問題など、食品を取り巻く問題や課題は尽きません。本学会が、これからも食品に関連する微生物をめぐる問題や課題に科学的または社会的な見地から情報発信や意見交換が行える有意義な場であるように理事長として尽くしてまいりますので、重ねてご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

星薬科大学
工藤由起子